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2008.7.12開設。 ショートショートを中心として、たそがれイリーが創作した文芸作品をご覧いただけるサイトです。 できれば毎日作品を掲載したいと思ってます。これからも創作意欲を刺激しながら書き綴って参ります。今後ともぜひご愛顧ください。

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     お江戸の平和を守るため、今日も同心は寒風吹きすさぶ市中を見回っていた。
     見回りの最中、頬を傷つけられるような寒風に耐えかねた同心は、橋のたもとにあるうどんを見つけた。
     髄から冷え切っていた体を温めようと、うどんをゆでる湯の白煙に惹かれ、同心は屋台の暖簾をくぐった。
     そして何のためらいもなく”かけうどんを頼む”といい、腰掛けた。

     その直後、店主は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
    「お武家様、さきほどうどんを切らしてしまいやして・・・申し訳ございません」
     同心は怒った。
     ならば、すぐ作ればよいではないか、と。
     店主は額ににじんだ冷や汗を着物の袂で拭いながら詫びた。
    「粉がございやせんし、この夜更けですから、なにとぞご勘弁を」

     同心は激怒した。
     そもそも、お前らのようなものが安心して商いできるのは誰のおかげだ。
     そうだろう、わしらが市中の見回りをしているからではないか。
     そのわしにうどんが出せぬとは、まさに武士を愚弄しておる。
     
     刀のつばに手をかけた同心を見て、店主は慌てた。
    「何とぞ、何とぞ・・・ご容赦を!」

     同心は刀を抜いた。
     真冬の満月に照らされた刀は、怪しげな光を鈍く放った。
     目の前で土下座をし、幾度となく頭を垂れる店主に、同心は怒りを押し殺しながら言った。

     食べ物の恨みは抑えられぬのじゃ。
     それがうどんゆえ、ますます抑えられぬ。
     よって、手打ちにしてくれよう、と。

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     バタン。
     勢いよく開かれたドアの前には、マユミが鬼の形相で立っていた。
     マユミの視線の奥には、ただ呆然としているタクヤがいた。
    「タクヤ、隣にいる女は、いったい誰なのよ!」
     
     隣でおびえる女。
     その女を左手でなだめながら、タクヤは絶叫した。
    「じゃあ、お前の横にいる、その男は誰なんだ!」

     社長はとある本を懐に忍ばせていた。
    『褒めると社員は伸びる』と書かれていた本には、社長が一夜漬けで調べたフレーズの部分にラインが引かれていて、社長は社員に見えないように、使いたいフレーズを見ては、社内を歩き回って1人1人社員を褒めて回った。
    「君の姿勢はいい姿勢だ。人柄がにじみ出ているよ」
    「残業ばかりもいいが、たまには自分を大事にしろよ」
    「へこたれたっていいんだ。失敗は成功の元だからね」

     社長の言葉に、社員は素直に反応した。
    「ありがとうございます」
    「これでやる気がおきました」
    「お気遣いありがとうございます」
     
     その言葉を聞いて、社長はもちろん喜んだ。これなら効果ありだな、と。
     早速書店に行って新たなボキャブラリーを増やさないといけないな。
     社長は早速その足で近所の書店に向かった。
     流行のジャンルゆえ、選ぶのに困るぐらい、関係の書籍はあった。
     悩んでいる社長を、書店の店主が呼び止める。
    「社長、この本がお勧めですよ。最近、どんな世代にも売れてるんですよ・・・特に、若い世代に」
     若い世代と聞いて、社長はその本に飛びついた。これならきっとうちの社員にも効果てきめんだろうと思った。

     その本の表紙には『社長に気に入られる答え方』と書いてあった。

    「あ、カメラの電池が・・・」
     
     ご安心ください。
     フロントにご用意しております。

    「あ、コサージュ付けてくるの忘れちゃった」

     ご安心ください。
     フラワーカウンターにて無料で生花をご用意できます。

    「せっかくだから2次会も・・・」

     それもお任せください。
     当式場地下1階には貸し切り可能なバーラウンジがあります。
     もちろん、皆様には無料で宿泊していただけます。

    「駅に友達を迎えに行きたいんだけど」

     もちろん、無料で送迎いたします。
     空港までのタクシーチケットは、ただいまサービス期間中です。
     片道無料にさせていただきます。

    「すみません、新婦の姿が見えないんです・・・」

     嗅覚に優れた犬をお貸しします。
     これで、いなくなった人もすぐに探し出せますよ。

    「・・・どうやら、新婦は駆け落ちしたようです」

     お任せください。
     表面的に結婚式を取り繕うために、代わりの新婦をご用意します。
     もちろん、一切費用はいただきません!

    「もう我慢できません、あの女と離婚します」

     そう来ると思っていましたよ。
     こちらでは離婚届も無料でご用意しております。
     もちろん、提出しづらいあなた様に変わって、代わりに市役所にお届けするサービスも実施しています!

    「・・・早く別の女性を見つけて、人生再スタートしたい・・・」

     わかっております!
     そちらのサービスも、当式場ではもちろんご用意しています!
     お好みの女性を、誠心誠意お捜しします!

     

     その前に、新郎様。
     悲しい気分を今日で振り払うために。
     無料で”離婚式”をご用意しております。
     ささ、どうぞこちらへ・・・

    「まあ、俺たちの話を聞いてくれないか」
    「すべこべ言うな。今更言い訳など聞いたって、お前らの寿命は今日でつきるんだからな」
    「それなら、遺言のつもりで聞いてくれてもいいじゃないか」
    「ちぃ、それなら、聞いてやろうじゃないか」

    「昨日の晩、俺たちはすき焼きをしたんだ」
    「それが、どうした?」
    「いつもなら、オーストラリア産の牛肉でな、脂身に乏しくて、まるでビーフジャーキーをそのまま煮て食っているようなものだ」
    「だから、それがどうした」
    「ところがだ、昨日に限って、俺たちの中に1人、羽振りのいい奴がいてな」
    「そりゃ、結構なことで」
    「そのお陰で、昨日のすき焼きは、なんと国産牛肉だったんだ」
    「Jビーフって奴か」
    「ああ、Jビーフさ!」
    「4人そろって叫ぶことでもあるまい」
    「いいや、国産牛だぞ!国産牛! それをだな…あいつは、あいつは…」
    「早く言えよ」
    「そうさ、あいつは、1人4切れの約束を反故にして、5切れも食べたんだ!」
    「くだらねぇ」
    「なんだと!4切れと5切れじゃ、満足度も栄養価も違うんだぞ!」
    「だから、4人そろって叫ぶのやめろよ」
    「それになぁ、あいつが5切れ食べたということは、誰かが3切れしか食べられなかったんだ!」
    「…」

    「俺たちは怒ったさ、激しく怒ったさ! それで…」
    「いつも5人いるのに、今日は4人なんだな」
    「だから、正直言って、今日は勝てそうな気がしない。手加減してくれないか」
    「お前ら、本当にヒーロー戦隊か?」

    「以前から申し上げてた、そういうつもりだったんですね…」
     聴診器を上腹部から下腹部に当て、ついでにと言わんばかりに、医師は僕を丸椅子に乗せてぐるりと回す。

    「食べるのは大いに結構、だけどね…」
     承知しています。
     食べる時には、賞味期限とか…食い合わせとか…よく考えれば、良いんですよね。
     僕は教科書どおり答えたつもりだった。
    「そうね。それも前から私は申し上げてるつもりなんだけどね…一言一句、変わらずね」
     医師は再び僕をくるりと回し、耳から聴診器をはずすと、見ただけではわからないカルテに、ドイツ語でなにやら書き始める。

    「いつもの薬、2週間分出しておきましょう…それとね」
     くれぐれも、暴飲暴食はやめなさい。このままだと、君、死んじゃうよ。
     牛乳瓶の底ぐらい太いレンズの奥で、医師の目がギラリと輝いた。
    「わかってるつもりなんですよ」
    「わかってるなら、きっちり自己管理をしなさい。つもりじゃ、困るんだよね」

     席を立ち、僕は診察室を後にする。
     帰り際に、医師に小さく会釈をする。
    「わかってますけど、人間たちにも何か言ってくださいよ。もう少し、いい夢を見ろって…銭とか女とか名誉とか…汚い夢ばっかりで、困ってるんですよ」
     医師にに言ったってしょうがない。でも、言わずにはいられなかった。

    「仕方が無いじゃないか…君は、バクなんだから」
     医師の一言に、僕の目から一筋の涙が流れ始め、止まらなくなった。

    「おつかい行ってきてくれない? オ、ツ、カ、イ」
     オカンがめずらしく俺に言う。
    「手伝いなんか全然しないんだから、あんた。おつかいぐらい行ってくれたっていいでしょうに」
     わかった。
     わかったって。
     その手に持ってる、メモのとおりでいいんだな!
    「そうそう。ちゃんと確認しておいてよ」
     わかってるよ。ガキの使いじゃあるまいし。
     それにしても・・・なんだこの買い物。
     まあいいか。オカンがそう言うだからな。

    「あら、やけに早かったのね。買ってきてくれた?」

     ああ、買ってきたよ。
     さくらんぼ。
     金魚花火。
     プラネタリウム。
     ユメクイ。

    「あれ、黒毛和牛上塩タン焼680円は?」

     しまった。
     忘れてた。

    「仕方ないわね。これだからアンタって子は。」

     仕方ねえじゃん。
     はじめての、おおつかあいだったんだからさ。

    「親方、あのお客さん・・・」
    「ああ、猫だろ。あの猫はいっつもチューハイなんだ。そろそろ巨乳、いや巨峰サワーがでるぞ。支度しとけ」
    「はい・・・それで、もう1つお尋ねしたいんですけど」
    「お前もここでバイトして1週間だろ・・・そろそろ覚えろよな」
    「いえ・・・あそこの・・・虎・・・」
    「ああ、虎か。焼酎の一升瓶を持って行ってやれ。早く酔いつぶれさせた方が店のためだ」
    「はい・・・」

     人は、飲み過ぎると虎になる。
     また、飲んで猫を被って、いい女になろうとする。
     週末の居酒屋は、まさに動物園なのだ。

     何よ、みんな!
     私がシングルだって言いたいんでしょ!
     そんなこと、言われなくたって、私が一番知ってるわよ!

     だからメールしたんじゃない。
     誰かに相手して欲しくて。
     一人っきりのクリスマスイブなんて、過ごしたくないから。

     今日は空いていますって。
     送ったのに。みんなに。
     どうして、どうしてみんなこんなに冷たいの!

     あ、ヒロミから電話だ。
     今ごろになって・・・もう25日になっちゃうじゃない・・・何よ、いまさら!

    「もしもしジュン?どうだった、今日は? どこまでやったの?」
    「何の話?」
    「いやだって、あんた自慢してきたでしょ、メールで」
    「だから、何言ってるのよ?」

    「だってあんた、自慢げに”今日は相手います”なんて送ってくるから・・・どうだったかなって思ってあげただけよ」

    「課長いる?」
    「いらない」
    「・・・じゃあ、部長はいる?」
    「いらない」
    「・・・専務はいる?!」
    「いらない」
    「あのねぇ、いるとかいらないとかの話じゃなくて、僕が聞きたいのは、今そこに課長や部長や専務は居るかって確認してるの。わかってくれないかなぁ」
    「うちは水族館じゃないですよ。なんで課長や部長や専務がイルカなんですか。確かめるにも値しない」
    「イルカじゃなくて居るか! 君と遊んでいる場合じゃないんだよ! とっとと誰かに変わって!」
    「君だなんて失礼な。人を卵扱いして」
    「黄身と白身の話をしてないんだよ! いいから電話、誰かに変わってくれよ! おたくの会社はどうなってるんだ!」
    「だから、うちはマニア専門の会社じゃないです・・・」
    「ヲタクじゃないよ! 社長だ、社長出してくれ! 文句言ってやる!」
    「えへん、この私が社長だと言ったら、どうするね」
    「・・・」

     

    「そなたの願いを聞いて進ぜよう」
     神は眼前で祈り続ける女性に語った。
     女はゆっくりと顔を上げ、己の願いを語った。
    「永遠の若さが欲しいのです。欲張りな私をお許し下さい」

     神はしばし黙考した。
     そして、何かを悟り、次のように言った。
    「永遠の若さを与えてやることはできる。しかし、そのためにはお前は義務を背負わねばならぬ」
    「義務・・・ですか」
    「そうだ。永遠の若さを背負うからには、お前がその若さを使い、この国の国民すべてに愛される存在であり続けなければならない。それがおぬしに、できるかな」
    「やります。このまま老化し、朽ち果てていくのはイヤです」
     女は即答した。
     その言葉を聞き、神はもっていた木の杖を振りかざし、女の眼前に差し向けた。
    「この女に、永遠の若さを!」

     女は目が覚めた。
     女の目の前には、週末の茶の間らしき光景が広がっている。
     そして、自分を見つめる無数の目。老人も、子どもも、あらゆる世代が自分を見つめていた。

     ”願いは叶えた。さっそく、義務を果たすのじゃ”
     女の頭の中に、神の声がこだました。
     女は訴えた。早速義務をと言われても、何をすればいいのでしょう?と。
     ”最初じゃからの。1回だけ教えて進ぜよう。目の前でお前を見つめている、多くの民に、これからわしが言う言葉を、明るい笑顔と共に伝えるのじゃ”
     して、どんな言葉で?
     女は神に問うた。

     ”サザエでございます!”
     神は裏声で女らしく叫んだ。

     おかしい。
     僕は2階の窓から、道をはさんだ真向かいのケーキ屋を恨めしそうに眺めていた。
     うちの店に勤めていた、腕の立つあの男。
     そのパティシエが、うちの伝統のノウハウをそのまま持ち逃げし、挙げ句の果てにはうちの目の前に店を構えた。
     伝統と現代の調和とか言って風潮された創作ケーキは、店内に入りきれないほどの客の行列を産む。

     呪いが足りなかったか。
     それどころか、アイツの店、最近は芸能人とか政治家までお忍びで来るって言うじゃないか。呪われるどころか、ますます繁栄してるじゃないか、ちくしょう。

     僕は店を飛び出した。
     そして大急ぎで近所の丘にある神社をめざす。
     藁人形にこめた呪いは、どうなってるんだ。
     大きな杉の木にこっそりと打ち込まれた藁人形と、僕の憎しみを込めた白い札。それをしばし見つめる。

     「祝ってやる」

     僕は自分の知能不足を嘆いた。

     スポーツ万能。
     さらに、チャレンジ精神旺盛。
     不可能と思えるチャレンジでも、巧みにこなしてしまう。
     だけど、そのチャレンジを成し遂げるときにありがちな、汗くさいドラマは、一切感じないし。

     僕はそんな大人になりたい。
     だから、「将来の夢」って宿題が出たときに、あの人のことについて、一生懸命書いたんだ。
     そしたら、先生が僕の作文を見て言うの。

    「タロウくん、人間はいくら頑張っても、ガチャピンにはなれないのよ」

    「儲かる話を教えてくれるそうだな」
    「前金制だ」
    「ちゃっかりしてるな・・・ほれ、10万だ」
    「ひい、ふう、みい・・・確かに」
    「さあ、早く教えろ。お前に払った10万円、それ以上儲かる話だと聞いてるんだからな」
    「ん? もう話は済んでいるぞ」
    「なんだと! そんな馬鹿な話があるか! 株とか、外貨とか、そう言う儲け話じゃないのか!」
    「何言ってる。俺のこの話をだな、もったいぶって15万で売れば済む話じゃないか。だからお前はバカなんだよ」

    「ちょっと、おたくの菓子パンに金属片が入ってましたわよ!」
    「もうしわけありません・・・では、早速お詫びのお品をお送りしますので、取り急ぎご住所を・・・」

    「ふう。やっぱり主婦はしつこいな。買った以上の賠償じゃないけど、とにかくがめつい」
    「課長、それにしても・・・最近はこういうの、なんだか多くありませんか・・・もう一度、工場全体のチェック、行なった方がいいと思いますが」
    「まあいいじゃないか。金属片の件は、保健所の査察次第だろうな・・・まあ、あいつらのことだ、今日チェックを入れているが、文書指導ぐらいで済ませてくれれば・・・」
    「それなら課長、先ほどお帰りになられましたよ。機械のメンテナンスを確実にするようにと、後日文書訓告されるようにおっしゃってました。だから私は・・・」
    「ああわかった。とりあえず、この話は終わりだ」
    「課長!」

    「いいんだよ!あれはバレたとしても、これとそれがバレてなければ、いいんだよ!」

     オリンピックで、日本が金メダルを取れることも少なくなった。
     お家芸と言われた、柔道にいたってはフランスやアフリカ諸国の競合選手、隣国の韓国や中国、さまざまな選手にこてんぱんにやられる有様。
     もうひとつのお家芸、野球にいたってはオリンピックの正式種目からはずされる有様だ。日本の関係者は現状を嘆いた。

     そこで彼らは「相撲」ならぬ「SUMO」を最後の切り札にした。
     「SUMO」は、その奇てらったスタイルと、肉体と肉体のぶつかり合いが魅力になったようで、正式種目になるまではそんな時間がかからなかった。
     
     そしてロンドンオリンピック。
     現役大相撲力士は、日本代表としてまわしを締め直し、金メダルに向かって邁進した。

     テレビの実況アナウンサーが絶叫する。
    「モンゴル強い!日本、この階級でも惨敗です・・・」

     タカシはヨシオに言った。
    「今日の遊びも面白かったな」
     ヨシオは無邪気に言葉を返す。
    「なんだか、オレたちまたビックになったって感じだよな」
     乳歯と永久歯の混ざった前歯を見せながら、互いに笑った。

    「またな!」
    「おう!また放火後遊ぼうぜ!」

     遠くで消防車のサイレンが聞こえる夕暮れ。
     これで、3日連続だった。

     部長に呼ばれた俺。
     なぜ叱責されなければいけないのか、理由はわからなかった。
     だが、始まった叱責を聞く一方な現実に、次第に憤りを感じていった。

     部長が息切れしそうになり、茶に手を伸ばした時。
     その瞬間を逃すまいと、俺は部長に詰め寄った。
     ”時候の挨拶が間違っていると言われますが、みんな当たり前に使ってる挨拶を、私はちゃんとやりましたよ!”と。

     部長は茶を噴き出し、頭から湯気を発しながら怒った。
    「『冷やし中華始めました』は、いつから時候の挨拶になったんだ!」

     去り行く助手に向かって、教授は語り始めた。
    「君は、夏になって『冷やし中華始めました』と看板を掲げるが、秋になって『冷やし中華終わりました』と掲げる店に出会ったことがあるかね」
    「いえ教授、そんな店は見たことがありません」
    「そうだろう。私は君が優秀な経営者になれると思い、あえてこの事を語っているのだ。研究半ばにして家業を継ぐというその親孝行に敬意を表しているが、それ以上に立派な経営者になって欲しいのだよ」
    「私のような者にそこまでのお言葉、ありがとうございます。先ほどのお話、経営者として顧客本位にならねばならぬという理念を忘れぬよう、戒めの言葉にしてがんばって参ります」
    「また落ち着いたら君の店に行くよ。まあ君のことだ、きっと立派な経営者になっているだろう」

     数ヵ月後、教授は車を走らせて、偶然彼の店を見つけた。
     車を減速し、彼の店に車を入れる。

     ”ガソリン税はじめました”

     誇らしげに掲げられた看板が、教授の心を複雑にした。

    「部長が私に卑猥なことを言ったんです」
    「まってくれ、そんなセクハラまがいなこと、私がいつ言ったんだね」
    「昨日の朝、会議に来るようにと言われた件がありましたよね。その時です」
    「昨日の・・・ああ、○○商事との提携内容の、内部協議だったよ。その時に私が? そんなことは言っていない!」

    「いいえ。課長は私に言ったんです。”君は手ブラで来てくれるだけでいい”って!」

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    HN:
    たそがれイリー
    年齢:
    50
    性別:
    男性
    誕生日:
    1975/07/16
    ▼ 最新TB
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    [04/29 hikaku]
    [03/13 ごま]
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