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2008.7.12開設。 ショートショートを中心として、たそがれイリーが創作した文芸作品をご覧いただけるサイトです。 できれば毎日作品を掲載したいと思ってます。これからも創作意欲を刺激しながら書き綴って参ります。今後ともぜひご愛顧ください。

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    「こいつ!こいつ!」
     俺は懸命に前田を呪った。
     数え上げたらきりがないのだが、前田が俺にしてきたこと・・・ねたみ、告げ口、顧客のぶんどり・・・とにかく、俺の仕事、いや人生のすべてに対して、アイツは俺にとって恨むべき、そして呪うべき存在なのだ。
     直接、前田に文句の1つでも言えばいいじゃないかと言うかもしれない。だけど文句を言えば問題が解決するわけではない。問題が解決しても、俺の恨みは消えることはない。
    「死ね!死ね!」
     俺は頭の中にもやもやした恨みを吹きはらすように、金槌を強く握りしめ、そしてわら人形に向かって何度も振り下ろした。

     それにしても、なかなか効果がないな。
     昔からの言われどおり、前田の頭髪を織り込んだわら人形を、毎日決まった時間に、家の裏山にある小さな神社に置いて、精一杯の恨みを込めて痛打しているのに。
     まあいい。今日はこれくらいにしておこう・・・最近帰りが遅いなと、妻が気にしていたからな。

     俺は神社の参道を足早に降りた。
     降りきって住宅街の道路に降りたとき、妻に出くわした。
    「おい、お前」
    「あ、あなた、お帰りなさい。どうしたの、神社から?」
    「ああ、なんでもないよ、なんでも・・・それにしても、おまえこそ、そんなサンダル履きで、どうしたの?」
    「ううん、なんでもないの・・・あなたが帰ってきそうだったっから・・・迎えに来ただけ、そう、迎えに来ただけ」
    「そうなの・・・ありがとう」
    「どういたしまして」
     俺たちは何気ない夫婦の会話をとりあえず済ませ、家路に向かって歩き始めた。

     だけど、俺は想像もしなかった。
     妻の手から下げられた袋の中に、小さなわら人形が隠れていることなど。
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