2008.7.12開設。 ショートショートを中心として、たそがれイリーが創作した文芸作品をご覧いただけるサイトです。 できれば毎日作品を掲載したいと思ってます。これからも創作意欲を刺激しながら書き綴って参ります。今後ともぜひご愛顧ください。 |
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「おめでとう!通算10000ポイントだよ!」
目の前に煙がたちこめ、それが消えると木の杖をついた老人。 まるで神様みたいだな。そう思っていた男に、老人は言う。 「わしはご覧のとおり神。さっき、君は車にはねられそうになった子どもを助けたね。それで10000ポイントなんだよ」 神と名乗る老人の言葉を、男はさっぱり飲み込めない。 神はまるで小説の種明かしをする筆者のごとく、説明じみた台詞をはく。 「人間の振る舞いに、神はポイントを与えているのじゃよ。それが節目になった時、わしらの出番なのじゃ」 よくわからないが、自分が何かの恩恵にあずかれるのだろうと言うことはわかった男。 「さあ、10000ポイントだと、お前の望むことを1つだけかなえてやろう。多少制限はあるがな」 多少? 男は鋭い目線を神に向ける。 「ただし、何でもかなえてくれとか、何回でもかなえてくれとか、そういうのはだめだ」 神は予防線を張りつつ、男に返答を催促した。 男は少々考えると、神に願いを告げた。 ポイント100倍でどうだ、と。 そう、今日以降の善行に、ポイントを100倍でつけてくれ、と。 「むむ、そんな抜け道があったとは・・・回数を増やすわけではないし・・・むむむ」 やむを得まい。わしの説明が悪かったのだ。よかろう。 神は脂汗を浮かべながら、男の願いをかなえることを約束した。 神が姿を消してから、男はなんだかよくわからない気分であった。 だが、目の前で神が神らしく一瞬で姿を消したことを見て、懐疑的な気分は薄れていた。 そして、早く善行を積まねばと、都会の喧騒の中をきょろきょろ見回していた。 すると、目の前で老婆が荷物を抱えて困っている。 これはすごいポイントになるぞ。男は手前の横断歩道が赤信号なのもかまわず疾駆した。 「おいおい、そこの旦那」 老婆にたどり着く直前に、男はいきなり右肩を叩かれた。 男は怒り心頭の面持ちでその方向に振り返ると、黒いコートを羽織った男が、八重歯を出して笑っている。 「あんた、悪いことしたね。俺は死神さ。罰を与えに来たぜ」 罰? 何を言うんだ? 男は死神に食って掛かる。 「お前、さっき信号無視したろ。それでポイント達成だ。お前さんの悪行、死んで償ってもらえとの裁定だよ」 死ぬ? 悪行? 信号無視で? 男は死神の首をつかみ、渾身の力で締め付ける。 「何をやっても無駄さ。お前さんのポイントは100倍だったからな」 100倍? さっき神は約束したが、それは善行ポイントのはずだ! 男は死神に食って掛かった。 「ああ、100倍だろ。善悪ポイント。お前さんの悪行も100倍になるんだよ。神の野郎、ちゃんと説明しなかったのか?」 里帰りはしたものの、もともと東京の大学に私が通うことを許さなかった親父とこたつで2人きりになるシチュエーションは、正直想定してはいなかった。もちろん、勘弁して欲しい。 「人生ゲームみたいな人生だったら、きっとバラ色の人生もあり得るよね」 「母さん、地震か」
「そうですねぇ…はい、お茶」 「私の手が震えているのかと思ったが、そうではないのだな」 「それだけ思えるのなら、老衰じゃありませんよ」 「…」 それにしても、最近地震が多い。 この1年ほど、朝昼晩、三食きっちり取るかのように地震は起こっていた。 しかし、ここ1ヶ月ほど前から、地震の頻度は増し、今日は午後三時に至る今まで、既に私の記憶では数えられないほどの地震が起こっている。季節は秋を迎えようとしているのに、家の前の街路樹で色づくはずのイチョウの葉さえ、昨今の地震で落葉してしまっているぐらいだ。 「母さん、区役所には連絡したのかね」 「ええ、ちゃんと連絡しましたよ。そしたら、やっぱり会社へ申し出ていただく方が対策をしてくださるのではって」 「何の話だね」 「あら、目の前の会社にやってくる学生ですよ。会社説明会に詣でるのはいいけど、家の前でゴミを捨てたり違法駐車したりって、なんとかならんのかって、あなた言ってたじゃないですか」 「そっちはいいから、地震の方だよ。ほら、地下に空洞があるとか、実は断層があるんですとか、区役所で調査してもらった方がいいんじゃないかって言ってるんだ」 「わかりましたよ、早速明日にでも、来ていただきましょう」 妻はそう言うと、ハンディ電話のダイヤルを押し始めた。 「あ、区役所ですか…」 グラグラグラ。 「母さん、地震か」 妻が答えるまでも無く、不気味な揺れは我が家を次第に包んでいくのだった。 翌朝10時前。 区役所の職員はそそくさとやってきて、そそくさと地震計を置き始めた。 「1時間様子を見ます。では後ほど」 他の業務があるので、と言い残し彼らは黄色の軽ライトバンに乗り、去って行った。 「なんだ、1時間待ってるんじゃないのか」 「あの人たちも、お忙しいんでしょうね」 「なんだ、お役所のくせに」 私は日ごろから思っているお役所への不平不満を、半ば独り言のように語っていた。 1時間はあっという間だった。 「体に感じる地震も、感じない地震も、まったく計測されていませんが」 「…き、今日は、偶然無いんだ」 「そうですか? それにですね、お宅だけじゃなくて、ご近所でも同様のお声があってもおかしくないと思うんですが、実はそんなお声が無いんですよね…どういうわけか」 「だから、1時間そこらじゃ結果は出ないよ。1日ずっと調べてくれれば、わかるんだ」 「うちも人がいませんからね、そんなにお宅の言い分だけをお聞きするわけにはいかないんですよ」 「う、うむむ…」 普段心の中で馬鹿にしている奴らにここまで言われるとは。私の胸の中ではマグマが噴出する寸前だった。 「おまえ、今日の説明会どうだったよ」 「ああ。いつもにも増して、格好付けといたよ」 「リーマンになるより、俳優になる方がいいんじゃない?」 「そうだな。この会社に入社できたら考えるわ、わはは」 家の前の大企業からは、いつものように会社説明会を終えた学生共がだらだらとネクタイを解きながら私の家の前を通り過ぎていく。 もちろん、この無作法で非社会的な振る舞いを見て、私の心中が穏やかになるわけが無い。 もう限界だ。役所の奴らにも、無知な若者どもにも。 その時だ。 足元のアスファルトが、徐々に震えてくるの感じた。 私より前に、妻は揺れに気づいていたらしい。どうやら、役所の連中に出すつもりのお茶、湯飲みの中でその水面が震えたらしい。 役所の奴らも、顔色を変え始めた。明らかに、気づいている。 路上で今から起こりうる事実に、私は胸を躍らせた。 そして、役所の無能者どもに聞こえるよう、わざと妻に尋ねた。いつもより、怒鳴るような声で。 「母さん、自信家!自信家!」 「おめでとう!通算10000ポイントだよ!」 「本当は、死にたくなかったんでやんしょ?」 『住居完備・食事無料サービス・インターネット使い放題・CS放送無料視聴』
このご時世で珍しい、正社員の求人。 勤務地が不特定・・・つまり、転勤があるのであろう。 でも、こんなに特典ばかりを並び立てている求人は、果たして真実なんだろうか? ネットカフェ難民だった自分を変えたい一心だった僕は、早速無料求人誌を片手に、その会社を訪れた。 「いやね、ほんまは、広告には書いてへん特典が、いっぱいあるんですわ」 関西弁の訛が抜けきらない担当マンが、笑いながら言う。 じゃあ、他に何があるんですか。と唐突に聞けば、担当マンの饒舌が始まる。 「冷暖房完備・・・6LDK住居、それにサウナ完備。ダイエット用のマシーンもありますし、最新ゲーム機や大型液晶テレビとかの、いわゆるデジタル家電ですな、それもすべておますねん」 ですから、即決でっせ。これだけついていて・・・実は、在宅勤務ですねん。 よぉするに、これだけの環境がついていて、給料・・・と言うか、収入はがっぽりもらえます。どうでっしゃろ? ここまで言われたら、僕は迷うことがなかった。 持参した三文判を机の上に取り出し、さっそく雇用契約書にサインし、押印する。 前金として100万円を現金で受け取った僕は、ほくそえむ担当マンに尋ねる。 「で、在宅勤務って、パソコンでなにをやるんです?」 「それについては、実際に勤務地でお話しましょ。これ、勤務地までの地図です」 翌日の朝。 僕は指定された時間に、地図を片手に勤務地へ出向く。 昨日の担当マンが、昨日より満面の笑みを浮かべて、僕に鍵を手渡す。 「まあどうぞ、これが勤務地ですわ。近未来感覚の、ブロックライクな住居ですねん」 「へぇ・・・なんだか、面白い形ですねぇ・・・」 「中はもっとすごいんですわ。まあ、どうぞお入りになってください」 ガチャリ。 真新しい玄関の鍵を開け、僕は新築の香りがする家の中に入る。 ガチャリ。 背後で、玄関が再び閉まり、担当マンが『忘れ物しましたよって、すぐ戻ります』と聞こえる。 まあいいや・・・これでネットカフェとも、おさらばだ・・・ 「そういうことだったんですか。私の時も、まったく同じです・・・」 女はソファーに腰掛けながら、スカートの丈を気にしながら、腰掛ける。 「おいおい君、そんな格好だと、見られてしまうよ」 「あ・・・」 「まあいいか。君と僕、つまり男と女を同居させると言うことは・・・生殖風景も貴重な鑑賞のネタになるんだろうね」 「・・・」 動物園の『ニンゲン』として鑑賞される生活を送り続けて、早4年。 外界のニンゲンとやらは、だんだん刺激が足りなくなってきたようだ。 そんなことを考えて途方にくれる僕と女を、小さな子連れの家族一行が、指差して叫んでいた。 「ママ、パパ! ニンゲンって、ナマケモノよりも、怠けてるんだね!」 「幽霊でも、出るんじゃないだろうね?」 近未来になり、愛着の生まれたペットをロボット化して、半永久的に飼う試みが行われたことは、誰もが知っている。 「本当は、死にたくなかったんでやんしょ?」 ”2005ネン、2ガツ14ニチ、ジカンハ、ゴゴ6ジ。コノセッテイデヨロシイデスカ?” さきほどから、僕と智子のイライラはピークに達していた。 茶封筒の中にある診断書。 |
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